映画「万引き家族」を観てきました。とても良かったです。
”良かった”という言葉も複雑だけれど、是枝監督作品のシャープさやリアリスティックが随所に現れている作品でした。
ストーリーはごくシンプルです。予告編から予想できる大まかな展開。
”なるべくしてなる”し、長く続かない状況だというのもみんなが分かっています。
しかし役者さん一人一人の佇まいや関係性の空気感、キャラクターやセリフの深みがそれをただでは終わらせないのです。
特に印象的だったのが
「なにで繋がってるの?」
というセリフです。
お金?
セックス?
心?
過去の出来事?
この言葉から、私は前夫とのことを回想していました。
数年前に離婚した前夫とは、「ただ一緒にいたい」という理由で結婚したわけですが、
私が勝手に頑張りすぎてしまったのと、お互いコミュニケーションが下手だったり、
時間的すれ違いもあったりして、
気がつけば形だけの関係になっていたのです。
「責任」とか「義務感」とか、”こうあるべき”感です。
”夫婦とは”、”夫とは”、”妻とは”、などという言葉に縛られて、お互いの存在自体を見れなくなっていました。
なんのために一緒にいるのかわからなくなっていたのですね。
なので別れました。
何回か話し合いをしたり、それこそ「夫婦ってなんだろうね?」と共に考えたりして、修復できそうだったりもしたけれど、「元どおりにしたい」という情熱がお互いに残っていなくて、お別れとなりました。
それを決断して離婚を提案した夜はずーっと眠れなくて、起きてるのか夢を見ているのかわからない状態で、世界がひたすらグレーでした。
いろんな人が夢の中に現れるんだけれど、薄暗い視界だから顔も見えなくてどこにいるのかもわからなくて、絶望っていうか不安っていうか。
色がない…。つまり光がない。
しかしそんなドン底の翌日に次のパートナーと出会ったりしたものだから、人生は不思議なものです。
その人が本当に楽しそうに(飛び跳ねるように)ピアノを弾く姿を見て、自分の顔が笑ってしまうのを止められないくらい、希望とワクワク、ドキドキが蘇ってきたのです。
長年押さえ込んでいた自分の夢や本当に好きなことを思い出した瞬間でした。
その人は年齢も一緒で誕生日も数日違いで、きっとこの世に生まれて来るまえに
と打ち合わせしてきたんじゃないかというくらい、「一緒にいてしっくりくる感じ」と、なんだかめちゃめちゃドキドキワクワクする感じがあって、私は学生以来数年ぶりに「恋」というものをしたのです。
その出会いによって私は自分自身の夢をもう一度掘り起こし、自分の足で立って歩いていこうと決意できたのです。
しかしその彼ともやがてお別れをし、私はまた別のパートナーと出会いました。
前夫・元彼とは、別れた後で親友になれました。
いろいろなことを学ぶための期間が終わって関係性がフラットに戻ったような感触でした。
結婚によってコミュニケーションという経験をし、大人になったのです!
離婚というと社会的には「失敗」なのかもしれませんが、私たちはそれによってお互いを尊重することや自分の気持ちと向き合うことについて、これでもかというほど経験できたわけで、その後も
それぞれハッピーに軽やかに生きていられる
のだから良かったと思います。
だから「夫婦ってなんだろうね?」と話し合える夫婦は良い夫婦なのだと思います。
離婚したからといってすべてがマイナスなわけではありません。私にとってはプラスの要素の方が何倍も多いです!
それぞれの人がかけがえなく、その時々は最愛の人でした。
でも状況は変わるし、時期が来たら離れるべくして離れます。
「夫婦」だからといって絶対の保証などありません。
未来のことはまったく分かりませんが、その時々でまっすぐに愛し合う・時を共にするというのは、この上なく幸せなことだと思います。
そして現在の私はというと、国際結婚してフランスに移り住むこととなりましたが、現パートナーは今の私にとってやはり、最高の人です。
前夫、元彼、それぞれに素晴らしいところがあるしそもそも比較することなどできませんが、「私が思い描くこれからの人生」にとっては、理想的すぎるほど理想の人なのです。
そして前夫や元彼との時間で学んだことが現パートナーとの共同生活で生かされていて、どんどんと関係性を深めることができているのも感じます。
きっと少し前の自分だったら、このパートナーと出会うこともできなかったかもしれないし、出会っても好きになってもらえなかったかもしれません。
付き合ってからも日本とフランスの超遠距離恋愛で壊れかけたり、同棲を始めてから、そしてプロポーズされてからも幾度となく試練のようなものがありました。
「ほんとにこの人と生きていくのか?」
「その愛はほんものか?」
などと胸がきゅーっ!と締め付けられる緊張状態が何ヶ月も続きました。
もし私が初婚だったら、そして日本人同士だったら、きっとここまで考えなかったと思います。
それもひとつひとつ消化し彼と向き合ってきたことで、今では歴代のパートナー史上、最高の愛をもらっているし、私は歴代のパートナー史上最高に、彼を信頼して愛の中にどっぷり浸かっています。
なので、あれだけたくさん悩み抜いた過程は必要不可欠だったのだと分かりました。
よってその時その時のパートナーが、自分にとって最適・最良な人なのだと思います。
そこに何かの葛藤や苦しいことがあるのなら、それは「何か学ぶべきことがある」という自分からのメッセージなのだと考えてみてください。
学ぶべきことを学び切ったら、きっと自然に関係性が終わるか、葛藤がなくなって良い関係になるかするはずです。
「夫婦ってなんだろうね?」
と、今の自分に問うとしたら、
一緒にいるだけでどんな時も生きていける人
だと答えます。
たとえばこれから世界がどんどんグレーになって、生きるのがしんどくなったとしても、
この人といればどこでもパラダイスになる
そう思える関係性だと思います。
私なりのひとつの答え。またいつか変わるかもしれませんが、その時はまた違う景色が見えているのでしょう…。
この記事が誰かのなにかのヒントになったら嬉しいです。